月夜の天使
激しい心臓の鼓動が耳元で聞こえる。

私は窓際にゆっくりと後ずさる。

詩苑の手が私に伸びてきた。

私は壁に追い詰められ、逃げ道を失っていく。

バンという音とともに、詩苑の両腕が私の両脇を塞いだ。

詩苑の瞳はすぐ近くで青の輝きを放つ。

詩苑・・・・。

詩苑がカインの一族・・・!?

「あなた・・・あなたがカインなの?」

静寂の音楽室。

窓の外からは学園祭の準備で忙しい生徒たちの声が聞こえる。

「カイン、か・・・」

詩苑は憐れむような表情に変わった。

「かわいそうに。君は、何も覚えてないんだね」

詩苑の右手がゆっくりと動き、私の頬に触れた。

「君は愛する人に裏切られたんだよ」

「え・・・」

「君の愛する人は・・・」

詩苑の顔が私にゆっくりと近づく。

その唇が、私の唇に今にも触れそうになる。

この人の魂・・・。

私、知ってる。

シオン。

私、この人を知ってる!!

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