月夜の天使
カナン、トオヤ、ミズキ、11歳の春。

「トオヤってすごく頭いいね!カナン今日の算数のテスト全然だめ」
ランドセルを背負ったカナンは落ち込んで肩を落とす。

「カナンは、作文が得意だろ?俺は苦手だもん。うらやましいよ」

「そうかな~?カナンは作文より、絵や歌が得意の方がいいな、ミズキみたいに」

「カナンは僕たちなんかよりもっといいものを持ってるんだよ、ね、トオヤ」

ミズキがトオヤに目くばせをする。

「ああ、誰ももってないものだ」

カナンは目を真ん丸くして驚く。

「ええ~!?誰ももってないもの?ミズキもトオヤも?なに、それ、なに!?」

「もっと大人になったら教えてあげるよ」

ミズキがニッコリと微笑む。

「・・・ケチ」

カナンが頬を膨らませてミズキとトオヤをにらむ。

「ハハ!カナン、怒った!やっぱりカナンは子供だなぁ」

トオヤがカナンのほっぺをつついて笑う。

「もう!ミズキもトオヤも嫌い!」
カナンはふくれっつらで怒る。

キキキー!!

後ろから車の激しいタイヤの音が聞こえる。

振り向くトオヤとミズキ。

車は真っ直ぐに3人目掛けて走ってくる。

「カナン!危ない!!」

ミズキの瞳が激しい青の光を帯びる。

目が眩むほどの強い光がミズキの体からほとばしり、

車は、一瞬行き先を見失う。

キキー!!

激しいブレーキ音。

トオヤがカナンの体を持ち上げ、横の塀に飛び乗る。

車はなおもミズキに向かって突っ込んでくる!!

「ミズキー!!」
カナンは悲痛な叫び声を上げる。

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