月夜の天使
ガシャーン!!

激しい衝撃音。

「ミズキー!!」

塀から飛び降りようとするカナンをトオヤが押さえつける。

「カナン!動くな!ミズキは大丈夫だ!」

「え?」

車は横転し窓は割れ、車体は大きくめり込んでいる。

その隣に、青の瞳の少年。

少年はじっと車の中の人間を見つめている。

「ミズキ・・・」

「塀に飛び移ると同時に、風で車を横転させた。まぁ、ミズキなら自分でなんとかしたけどな。」

トオヤがカナンを持ち上げ飛び降りる。

「ミズキ。やっぱり操られた人間か?」

車の中を見つめたままミズキは答える。

「うん。この人は普通の人間だよ。奴らに操られてるんだ」

「アヤツラレテル?ミズキ、トオヤ、それってなんなの?」

「ついに奴らが現れた・・・ってことだね、トオヤ」

「ああ、思ったより早かったな。まずは、いずみ姉さんに報告だ」

首をかしげるカナンの横で二人の少年は青の瞳を輝かせ、少女を護る決意の表情を浮かべる。

その様子を影から見つめる小さな少年。

「ミズキ・・やはり裏切るか。俺はお前を許さない」

静かに立ち去る少年。

この瞬間から3人の運命が少しずつ廻り始める。

哀しく、切なく、激しい運命の歯車が音をたてて、廻り始め、カナン・トオヤ・ミズキの運命を変えていく。

小さなカナンは、まだ、知る由もなかった・・・


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