月夜の天使
月見草がしっとりとつぼみをつけている。

「今夜咲きそうだね、ミズキ、トオヤ」

カナンが無邪気な笑顔で月見草を見つめる。

1年の歳月を経て、生まれ変わった月見草。

カナンは自分を見るように不思議な愛情を感じている。

「カナン、今日は夏祭りに行くだろ?帰ってくるころにはきっと咲いてるよ」
トオヤが笑いかける。

「うん、行く!ミズキは?」

「僕は今夜はだめなんだ。友達がどうしても来るって」

「ふぅ~ん、わかった、じゃ、トオヤと二人で行く!」

カナンはなんだか、おもしろくない。


公園から盆踊りの音楽が聞こえる。

「いってらっしゃい!トオヤ、カナンをよろしくね」

いずみが心配そうにカナンを見つめる。

「わかってる」

トオヤがぶっきらぼうに答える。

「他のみんなも行くから今夜は少しだけ私とミズキだけで寂しいわ」

「いずみお姉ちゃん、何買ってきてほしい?」

カナンがいずみの寂しそうな顔を見て思わず声をかける。

「そうね、ヨーヨーなんていいかもね」

「わかった!ヨーヨー買ってくるからお姉ちゃん待っててね!」

夜の闇が降り始める。

少しずつ『天使の泉』から遠ざかっていく子供たち。

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