月夜の天使
「いずみお姉ちゃんってとっても優しいよね」

白に赤い帯の浴衣を着たカナンは、下駄に悪戦苦闘中だ。

「まあ、一番年長のお姉さんで孤児院の仲間というより、先生だもんな」

トオヤはカナンの前をスタスタと歩いていく。

「トオヤ!もっとゆっくり歩いて!足が痛いよ」

「・・・ほら、手出せよ」

トオヤがカナンに手を差し伸べる。

横を向いてこっちを見ないトオヤ。

「トオヤ・・」

その横顔が赤くなってるトオヤがカナンにはなんだかおかしかった。

「なに、笑ってんだよ、嫌ならいいぜ」

「ううん、ありがとう」

手をつなぐ二人の影に月が柔らかな光を奉げる。


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