月夜の天使
カナン16歳の春

「いってきまーす!」

「いってらっしゃい!」

カナンの高校の初登校日。

元気に出て行くカナンをカオリが送り出す。

カナンはまだあどけなさの残る少女の出で立ちだが、ふとした時に見せる大人びた表情がカオリを驚かせることがある。

胸に秘め続けている恋心。

あの炎とともに消え去った愛しい人。

カナンは、何も伝えられずに消えてしまったその人をずっと待ち続けている。

純白の月見草のように儚く消えてしまったあの人を・・・。

「うわ、初日から遅刻しそう!」

カナンは勢いよく走り出す。

「わっ!」

石につまづき、転びそうになるカナン。

グイ!

カナンは腕をつかまれ失ったバランスを取り戻す。

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