月夜の天使
「危なかった。相変わらず危なっかしいな、カナン」

懐かしい、その声。

いや、すっかり男性のトーンになった低い声。

見なくても、わかる。

カナンの心に夏祭りの夜の手のぬくもりが甦る。

カナンはゆっくりとその人を振り返る。

カナンを見つめる涼しい瞳、整った輪郭、風にそよぐ少し長めの髪、温かいその大きな手。

「カナン、4年ぶりに会ったんだぜ。何か言えよ」

カナンの瞳は見開かれ、体は石になったようにぴくりともしない。

「・・・・・たの?」
「ん?なに?」

「どこ・・・行ってたのよ、トオヤ!!」

カナンの怒った顔に目を見開くトオヤ。

「カナンを置いてどこ行ってたの!?ひどいよ!・・・会いたかったんだから・・」

会いたかった・・その言葉に胸が詰まり涙がこぼれる。

くしゃくしゃの泣き顔で怒るカナン。

グイ!!

思わず、カナンを強く、強く抱きしめるトオヤ。

「ごめん、カナン・・・ごめん!」

カナンはトオヤの胸の中で4年分の想いを込めて泣き続ける。

「カナン・・・俺も会いたくてたまらなかった」

この再会が、カナンの新たなる運命の始まり・・・。



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