月夜の天使
ザザーン!!

引いては寄せる波。

月の引力に導かれ、海はその表情を変える。

引いては、寄せて、導かれては、還っていく。

「ここ・・・は?」

タクシーに乗ってやってきたその場所は、

視界一面に波間が見える海岸線。

切り立った崖の向こうに月が顔をのぞかせている。

「この場所に僕達は落ちたんだ」

ミズキの表情は緩やかですがすがしい。

「ここに?」

「何百年も昔の話だよ。カナンたちが先に月を逃れ、僕達は後を追うようにここにたどり着いた」

「この場所に来ると月のエネルギーを体中に感じるんだ。だから僕はよくここへ来た」

そう言うとミズキはカナンの手をとり自分の胸に押し付ける。

「カナン・・・僕を殺して」



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