月夜の天使
ザザ・・・ン!!

殺して・・・?

ミズキの真剣な眼差しがカナンの心に突き刺さる。

「な・・んで?ミズキ?・・どうして!?」

「カナン、僕の魂の鍵を君に渡す。僕が僕であるうちにその鍵で封印を解くんだ」

「やっ、嫌よ!そんな事したらミズキは永遠にいなくなってしまう!!」

ミズキの手を払いのけようとするカナン。

ミズキはカナンの手を強く握り締める。

「僕はカインだ!」

ビクッ!!

ミズキの大きな声にカナンは目を見開く。

「僕の心はもうすぐカインに支配される。その前に僕の封印を解けば、裏切った僕を狙っている邪気たちが僕の魂を食ってくれるだろう」

「やだ・・ミズキ、嫌よ・・・」

「魂の封印を解く鍵は2つ。1つは、心が大きく傷つけられること。もう一つは、本人しか知らない『魂の言葉』を手に入れ、その体の鍵に触れながら唱えること」

ミズキはシャツの下、自分の心臓にカナンの手を押し付ける。

「僕の鍵はここだ。そして唱えるんだ」

カナンは涙声で叫ぶ。

「や!!聞きたくない!!やめて!!!」

「僕の鍵は・・・」

「やめて―!!!!」


ザン!!

海が寄せてくる。

月が優しく波間を照らす。

「・・・・・」

「ミズキ・・・?」

見上げると、ミズキが月の光を浴び優しい瞳でカナンを見つめている。

その瞳から、一すじの月のしずくがポタリ・・・と落ちて波間にはじけた。



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