月夜の天使
暗闇の中に、光る二つの瞳。

妖しく光る二つの青い瞳。

窓から漏れる月の光がサラサラの茶色に光る髪を照らす。

瑞樹・・・!

「瑞樹なの?」

その瞬間、パッと部屋の電気がつけられ、加奈はまぶしさで目を細めた。

そっと目を開けると、それはいつもの光景だった。

瑞樹は椅子に座り、片手に本を持ったまま、こちらを振り返っていた。

「瑞樹、今・・・」


「加奈、ただいま。今まで疲れて本持ったまま寝ちゃってたよ」

瑞樹の笑顔はいつもと変わらないように見えた。

気のせい?目の錯覚?

「また部活無理したんじゃない?」

「大丈夫だよ」

優しく笑う瑞樹の瞳はどこまでも澄んだ黒の瞳だ。

「そうだ、今日ね、瑞樹の剣道部の先輩の須藤十夜って人に会ったの。私のこと知ってたみたい。それでこれを渡してくれって頼まれたの」

須藤十夜の名を聞いて瑞樹の目が一瞬鋭く光った気がした。

「十夜先輩か」

加奈は月見草の写真を瑞樹に渡す。

「これなんだけど…なんの意味があるの?」

瑞樹は写真を受け取ると、少し目を細めて写真をじっと見つめる。

そして写真の裏の文字を読むと目を伏せて苦笑にも似た笑みをもらした。

「なんでもないよ。剣道部で流行ってるゲームなんだ」

そう言って顔を上げて笑った瑞樹の笑顔は、天使のように柔らかだった。

青い光。

あれは一体なんだったのだろう…?

そんな思いを巡らしながら、加奈は眠りについた。







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