月夜の天使
半年ぶりに入る『天使の泉』。
何も変わっていない。
入るとすぐにあの時と同じ受付らしい女性が出てきた。
「十夜さん。お帰りなさい」
「ただいま。姉貴は?」
「奥で休んでらっしゃいます」
姉?
加奈は、はやる鼓動を押さえきれなかった。
まさか…。
占いの部屋よりももっと奥へと廊下を進むと、少し館内の色調とは違った趣きの古めかしく重たい印象の扉につきあたった。
須藤十夜がノックすると少し木が軋むような音が響いた。
「十夜ね。どうぞ」
中から聞き覚えのある女性の声がして加奈の心臓の鼓動はますます激しくなる。
ギィと古い木の音が鳴り響き扉が開いた。
須藤十夜に続いて中へ入る。
そこは、想像とは違う世界だった。
部屋の中央には祭壇がある。
祭壇の上には、天使のオブジェ。
祭壇を囲むように白い月見草が植えられている。
月見草の花びらはどれも蕾を閉じていてしおれかかっているように見えた。
そしてその蕾の横には、月見草の白よりも透き通るような白い肌をもった月野いずみが口の端をしっかりと上げて自信ありげな笑顔で立っていた。
その強い瞳は確かに須藤十夜そのものだ。
「渡瀬。俺の姉貴。いずみだよ」
月野いずみは祭壇の向こう側から瞬きもせず、加奈をじっと見つめる。
「加奈さん、あなたにもう一度会いたくて十夜に連れてきてもらったのよ。突然ごめんなさいね」
何も変わっていない。
入るとすぐにあの時と同じ受付らしい女性が出てきた。
「十夜さん。お帰りなさい」
「ただいま。姉貴は?」
「奥で休んでらっしゃいます」
姉?
加奈は、はやる鼓動を押さえきれなかった。
まさか…。
占いの部屋よりももっと奥へと廊下を進むと、少し館内の色調とは違った趣きの古めかしく重たい印象の扉につきあたった。
須藤十夜がノックすると少し木が軋むような音が響いた。
「十夜ね。どうぞ」
中から聞き覚えのある女性の声がして加奈の心臓の鼓動はますます激しくなる。
ギィと古い木の音が鳴り響き扉が開いた。
須藤十夜に続いて中へ入る。
そこは、想像とは違う世界だった。
部屋の中央には祭壇がある。
祭壇の上には、天使のオブジェ。
祭壇を囲むように白い月見草が植えられている。
月見草の花びらはどれも蕾を閉じていてしおれかかっているように見えた。
そしてその蕾の横には、月見草の白よりも透き通るような白い肌をもった月野いずみが口の端をしっかりと上げて自信ありげな笑顔で立っていた。
その強い瞳は確かに須藤十夜そのものだ。
「渡瀬。俺の姉貴。いずみだよ」
月野いずみは祭壇の向こう側から瞬きもせず、加奈をじっと見つめる。
「加奈さん、あなたにもう一度会いたくて十夜に連れてきてもらったのよ。突然ごめんなさいね」