月夜の天使
放課後になり生徒達が教室を出て行きはじめる中、加奈は瑞樹の迎えを待ちながら窓の外を眺めていた。

「加奈!」

呼び声に振り向くと、教室の戸口から瑞樹が中を覗いていた。

ざわざわざわ!

なんか好奇心の目を感じる・・・。

振り向くと、教室中の女子が瑞樹に注目し、好奇の目で瑞樹と加奈を交互に見つめていた。

「かわいい!」

「あれ誰?すごい美形!」

「1年の渡瀬瑞樹だよ。須藤くんの男っぽさとはまた違った美少年だよね。私ファンだし!」

「渡瀬?渡瀬加奈の弟かな?でも似てないね」

ああ、みんな私に全然構わず噂してるよ・・・。

教室中の視線を感じながら加奈は瑞樹へと近づいた。

「瑞樹」

加奈が瑞樹に話しかけると同時に後ろから清香の楽しそうな声が聞こえた。

「瑞樹くん、久しぶりだね!私のこと覚えてる?」

気づくと清香は加奈のすぐ後ろに立っていて瑞樹をニコニコと見つめていた。

「うん、覚えてるよ。加奈の親友だからね。姉の加奈がいつもお世話になってます」

そう言って、瑞樹はとびっきりの笑顔を見せた。

「きゃ~!かわいい!」

瑞樹の笑顔で女子たちのテンションがあがってしまった。

これ以上いると収拾がつかなくなると思い、早々に教室を退散する。

「加奈~!美少年づくしの、この幸せ者!」

廊下中に清香の声がこだました。

助けてくれてるのか、好奇心旺盛なだけなのか。

加奈は瑞樹と顔を見合わせ、久しぶりに大笑いした。





< 27 / 201 >

この作品をシェア

pagetop