月夜の天使
病院に10歳の加奈と母親が見える。

『お母さん、お父さん死んじゃったの?』

『・・・』

うなだれて憔悴しきった母の顔。

『二人で行かせるべきじゃなかったわ』

『・・・お母さん?』



12歳の加奈と母親の会話が聞こえる

『お母さん!今度模擬店で手作りのバッグ出品するの。お母さん手伝ってくれる?』

『加奈、あなたももう中学に入るんだから何でも自分でしなさいね』



12歳の加奈と10歳の瑞樹、学校の帰り道。

『加奈、嫌われちゃったかなぁ』

『加奈、お母さんは加奈のことが好きだよ。お母さんはきっと疲れてるんだ。二人でプレゼントをあげようよ』

『プレゼント?なにあげるの?』

『手作りのペンダントとかいいんじゃない?』



数日後、リビングにいる加奈と瑞樹と母。

『お母さん、いつもありがとう』

『瑞樹、手作りなんて嬉しいわ、ありがとう』

『お母さん、私も』

『・・・加奈、ありがとう。大事にするわ』



翌日、リビングに入ろうとして母を見つける加奈。

『加奈、ごめんね・・・』

『お母さん、泣いてる?』

『加奈?いたのね。なんでもないわ。ちょっと出かけてくるわね』

『あれ?私のペンダント』

見ると、昨日母に渡したはずの亡くなった父と私が写っている写真入りのペンダントがゴミ箱に捨ててあった。

『お母さん・・・』

リビングで一人、小さな肩を震わせて泣く加奈…。







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