月夜の天使
「加奈、ここ、ここ!天使の泉だよ!」

「なんだ、こんなとこにあったのかぁ」

占いの館を探し続けてやっと見つけた加奈と清香は、安堵のため息をついた。

喧騒ざわめく大通りからは、少し離れた裏通りにその店はあった。

外装は黄色とオレンジの温かい色調の天使の絵が印象的で、中に入ると壁には天使が三日月の上で眠っている絵画が飾られていた。

「へぇ~、かわいい店だね」

清香はわくわくした顔を隠しきれず、店の中を一心不乱に見回していた。

「お二人様ですか?」

振り向くと、店の案内係らしい若い女性が立っていた。

「はい、私たち占ってもらいたいんです!」

清香が元気に答え、加奈もうなづいた。

受付を済ませ待合室で待っていると、清香が小さな声でつぶやいた。

「ねぇ、ここって全然お客いないけど、ほんとに当たるのかな?」

この館の客の少なさには、加奈も少し不安を感じていた。

手に握り締めたチラシには、『天使の泉。あなたを泉から見守ってくれる大切な天使が必ずいます。その泉を少しのぞいてみませんか?』という宣伝文句が並ぶ。

瑞樹ったら、なんでこんなチラシもってたんだろ。

昨夜もまた母と喧嘩し落ち込んでいた加奈に、瑞樹が今朝になって差し出してきた。

「ここ、当たるんだって。行ってみたら?」


< 6 / 201 >

この作品をシェア

pagetop