月夜の天使
「十夜・・・」

加奈の長い黒髪がスッパリと切り落とされ、髪は肩くらいの長さになっていた。

髪が私を襲った。

苦しくて、すごい力で。

十夜の声。

十夜の熱い唇。

なにか熱いものが体に流れて。

髪は十夜を襲い、一瞬のカマイタチが私の髪を切去った。

全てが一瞬の出来事だった。

わかってる。

頭ではわかってるけど、体がついていかない。

「加奈」

気づくと、十夜に抱きしめられていた。

「加奈、よかった」

十夜の絞りだすような声がした。

「加奈のきれいな髪、切っちまった・・・ごめん」

髪・・・。

ハッ!と我に返り十夜を見上げる。

「どうして髪が?なんであんなことが!」

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