月夜の天使
「加奈に暗示をかけた奴がいる」

「暗示?」

「魂に封印をかけた加奈の髪を操るなんて不可能だ。おそらく、加奈が何かを聞いたり見たりした時に、加奈が自らを襲うように暗示をかけたんだろう」

「一体誰が!?」

「まだ確信はないが・・・思い当たる事がある」

十夜はそれ以上何も言わない。

なにかを考え込んでいる。

「十夜、それと・・・さっきの、キ、キスっていうか、十夜の唇すごく熱くて、体の中になにかエネルギーみたいなものが入ってきた。あれは一体・・?」

十夜は加奈から体を離すと言った。

「加奈の体内に俺のエナジーを送り込んだ。暗示にかかった君には何かショックを与える必要があった。君を傷つけずに助けるにはあの方法しかなかった。」

十夜のエナジー。

あんな一瞬で、体が燃えるようだった。

なんて熱くて、なんておびただしい量のエナジーなの!

「あれはキスじゃない。忘れてくれていい」

横を向いてこっちを見ない十夜。

忘れろ、なんて無理だ。

十夜の熱い唇。

まだ、温もりが残っているのに。

瑞樹を愛してる。

でも、なぜなの?

私、嫌じゃなかった・・・。

十夜のエナジーがあまりに熱くて

このキスは、忘れられない。


< 63 / 201 >

この作品をシェア

pagetop