月夜の天使
ガチャリとドアを開けると、部屋は小さく、月明かりのようなオレンジのランプが輝いていた。

「渡瀬加奈さんですね。お座りください」

部屋の真ん中の丸い木のテーブルに、月野いずみは座っていた。

20代半ばくらいだろうか。

黒の長い髪、色白の肌、黒のワンピースを着て胸には金色の三日月の形のペンダントが輝いていた。

目鼻立ちがくっきりとした美人で、黒目がちで意志の強そうな瞳がとても印象的だ。

「あなたは男性として生まれるはずだった人ですね」

月野いずみは唐突にそう切り出した。

「え?」

「あなたは女性として生まれたばかりに、不幸な運命なのよ」

「どういうことですか?」

「あなたの母親は男の子を望んでいたんじゃない?違う?」

ある日の母の冷たい言葉が甦る。

『加奈が男の子だったらどんなによかったか。あなたが生まれた日、女の子だって告げられて、お母さん、泣いちゃったわ』

なぜ初めて会ったこの人に、そんな嫌な思い出を語らなければいけないのだろう?

思い出したくもないのに。

加奈は動揺し、声を振るわせて言った。













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