月夜の天使
「加奈!おはよー!!」

「清香!おはよ。」

「須藤くんもおはよ!相変わらず熱いね!二人」

いつもどおりの朝。

十夜と登校する加奈に清香が冷やかしの言葉をかけてきた。

「清香だって彼と仲良いじゃない!一緒の大学目指してるんでしょ?」

もう否定するのも面倒で曖昧にしていたら、十夜とは学校では「公認の仲」ということになってしまった。

「そういえば、加奈。美織って子、転校するんだって?」

「うん、そうみたいね。詳しくは聞いてないけど」

「あのお騒がせ娘もいなくなるのか~。でも最近全然加奈に会いに来ないね。須藤くんにもさっぱりだし。二人の熱々ぶりを見てさすがの美織もあきらめたか」

十夜と加奈は顔を見合わせ笑いあう。

「なに!?なに、なに?二人して今私を笑ったでしょ!?」


放課後。

十夜と一緒に帰宅の途につく加奈。

十夜が何かを見つけて優しく微笑んだ。

「加奈、美織だよ」

見ると、橋の上で美織が一人、川をのぞきこんでいた。

「美織さん、よね?」

加奈が笑いかける。

「あの、あなたは?」

「落し物を届けにきたの」

「?」

「これ、あなたの大事なものでしょ?」

加奈はムーンストーンを差し出す。

「これ!お母さんの形見!火事で燃えてしまったと思ってた。これ、どこで?」

「火事の時、私たち前を通りかかったのよ。そしたら美織さんが救出されるところに遭遇して、美織さんの手からこれが落ちたのを見たの。とても大事そうに持ってたから」

「そう、ありがとう。」


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