月夜の天使

「こりゃ、人気でるよね…」

加奈はまたも深いため息をついた。

「あっ！休憩に入った！加奈、凛音と話してくるからちょっと待ってて！」

清香の惚れこみようには感心してしまう。

あ～ぁ、十夜待たせちゃうな。

加奈は半ば呆れたような気持ちで清香のはしゃいでる姿を目で追っていた。

しばらくして、清香の呼ぶ声が聞こえてきた。

「か・な～！！早く！ちょっとこっち来て！！」

「なによ～！清香」

清香のところへ行くなり、久世凛音、その人が加奈に微笑みかけてきた。

静かなたたずまい。

上品な物腰。

清廉潔白ってこの人のことを言うんだわ。

そんなことを考えてしまうほど、彼女のたたずまいは特別だった。

凛音は親しみを込めるような微笑で加奈を見つめる。

「渡瀬加奈さん、よね？」

「ええ」

「清香のお友達で良かったわ。見学に来てくれてありがとう」

「いえ、演技すごく迫力あって見入っちゃった。とても同い年には思えない」