月夜の天使
「…でも、私にはどうしようもないじゃないですか?」

月野いずみは静かな微笑みをたたえて言った。

「あなたは、女性として生まれることを選んだの。あなたの運命は不幸でも、あなたの魂は決して不幸じゃないわ」

「私が選んだ?私の魂?」

わからない。

この人が何を言っているのか、わからない。

何か無性に胸の奥がざわついた。

「私、やっぱり帰ります。天使なんているわけないもの」

加奈がドアに向かって歩きだすのと同時に、月野いずみが囁くようにつぶやいた。

「女性として生まれることを選んだあなたなら、必ずまたここに来るわ」




占いの部屋を出て、加奈は清香を探した。

清香はあまりに早く出てきた加奈に驚き、駆け寄ってきた。

「どうしたの?もう終わったの?」

動揺を隠そうと加奈は中途半端な笑顔を作る。

「うん。私はあんまり当たってなかったよ。…つまんないから出てきちゃった」

それが、この不思議な占いの館との出会いだった。

















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