俺達にはオーナーがいる
地下駐車スペースは鉄のシャッターがついていて、人が容易に入れる場所ではない。

唯は直ぐに、その足の持ち主が誰だかわかった。


「はぁ…。」


酒も入っていて、ライブ後の疲れも残っている身体がさらに重くなる。

近づいて見れば、そこに冴がいた。


壁に寄りかかりぐったりとしている。
この真夏にこんな所に居れば、誰でもそうなる。

数個のペットボトルの空き容器が転がっていて、きたない。


唯は、投げ出されてる冴の足を突つく様に蹴り、


「冴。起きろ!!」


そう声をかける。
現在夜中の2時を回った所。

全く起きない冴の頭から
飲みかけのミネラルウォーターをゴボゴボとかける。


「うぅ…う…えぇ??」


自分が濡れているのと、さらに頭から掛けられ続ける水に、何が起こっているのかわからず手や身体をキョロキョロしながら見て…


やっと正面の足に気が付く。


「……唯……さん。」


見上げながら、冴は唯の顔を見て言った。


「…冴。馬鹿か?」


唯は酷く冷たい目で、冷たい低い声でそう言ったのだ。

冴も、唯から視線を逸らす事も出来ず、ただ見上げ…見つめていた。
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