俺達にはオーナーがいる
その勢いは凄くて
冴の後頭部が壁に強打して

『ゴチン』

と鈍い音がした。


「捨てたのか?」

「…え?」

「ここの暮らしを捨てたんだな?」

「す…捨ててない!!」


見る見るうちに冴の瞳に涙が溜まり、ポロポロとこぼれ落ちる。
その涙を唯は、指で拭いながら


「どこだ。カギは。」


しつこく聞いてくるので、冴も観念した。


「…部屋に…。」

「帰るつもりはなかった。そう言う事だな?」


唯は冴の胸ぐらを掴み、ドアを開けて中に押し込んだ。


「ち…違う!!」


冴はそう言いつつ、唯に押し入れられた勢いで床に倒れこんだ。
後頭部の痛みも、腕を掴み上げられた痛みも残っているが、更に膝と肘を強打した痛みに悶絶。


「違うか?」


上から降ってくる声と、地下玄関の暗闇に怖さが倍増して震え上がった。

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