さよなら、またね
映画館を出て、喫茶店でコーヒーを飲む仁とパフェを頬張る私。
回りは大人ばっかで、すごく緊張する。
「なあ、雫」
「うん?」
真顔で私を真っ直ぐみる仁。
知ってるよ、知ってるから。
仁の口が少し開いた。
この関係壊しちゃうの?
す、
「すきだ」
わかってたよ、仁。
でも優しいから知らない素振りしてあげる。
真っ赤な耳してる君に。
ごめん、って言う前に。
チリン
喫茶店のドアが開いた。
目が丸くなるとか口がふさがらないとかこういうことを言うんだね。
君が、お兄ちゃんが立ってた。
わかってる。
この世にお兄ちゃんはいないんだ。…だけど。なのに。私の知ってるお兄ちゃんだよ。