さよなら、またね

こちらを見て微笑んだ。


私もすぐに立ち上がった。



「雫?」


仁の声も届かない。




お兄ちゃん!


抱きしめようとしたがもうそこにお兄ちゃんはいなかった。



見渡しても、いない。


幻覚だったの?



いるはずないお兄ちゃんが私の幻覚を起こした。


涙がこぼれた。



またポケットからハンカチを…

あれ?



ない。


確かにさっきまで入ってたはずのハンカチがなくなっていた。すぐに床を探した。地べたに這いつくばって。



私の宝物がない。


なくなってしまったのだ。



「雫!どうしたんだよ!!」


客も店員も私を不思議にみる。


ハンカチがないと涙が止まらないの。ハンカチがないと私は生きていけない!!



すぐに探すのをあきらめた。


ううん、あったの。



お兄ちゃんがさっきまで立ってた場所。幻覚だと思ってたとこに。


だけどハンカチは私に捕まる前に飛んでった。
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