群青ホームラン
結局うちのチームがいれた得点はその一点だけ。俺がホームランを打ったせいで一軍のピッチャーに交代され試合はボロ負けをした。
仲間はかなり悔しがっていたけど、俺はそうでもない。少しだけ、あのホームランで自信がついたから。
試合に勝てなかったのは悔しいけど、俺の試合はまだ終わってない。
「竹田お疲れ様ー」
長崎が笑顔で俺を迎えてくれた。冴木たちは気を使ったのか『お疲れ』と一言だけ言ってその場を後にした。
「な、長崎俺……」
「じゃーん!!ボール拾ってきちゃった。これ貰ってもいいよね?」
長崎が持っていたのは俺が打ったホームランボール。
「いいけど、試合負けちゃったし……」
なんて、また自信喪失なことを言うと長崎はニコリと笑った。
「これは竹田が頑張った証じゃん?でも今度は試合に勝ったホームランボールが欲しいな」
「じゃ、じゃあ……次の試合も見に来てくれる?」
長崎の返事は……。
「当たり前じゃん!」
俺はその日、長崎に気持ちを言わなかった。
でもそれは言えなかったのではない。
今度は試合に勝ったホームランボールと一緒に俺の気持ちも渡すから。
だからまだ、俺の恋は延長戦。
恋も野球もいつかあの青空に高く高く飛ばしてやる。
俺の群青ホームラン。
それが叶うのはもう少し先のこと。
【完】