群青ホームラン
そういえば青木はそんな素振りは一切見せない。もっとも青木は焼きもちを妬くタイプじゃないし、束縛だってしたりしない。
そんな話をしていたら、丁度青木からメールが届いた。
【今日一緒に帰ろう?】
そのメールを竹田に覗き見され、露骨にため息をつかれた。
「結局ラブラブですか。いいですね楽しそうで」
青木とは喧嘩もしないし、仲はいいと思う。こうして一緒に帰ったりするし、周りの目も気にならなくなった。
そして放課後になって帰り道。俺は青木と白石駅で合流した。駅のホームで電車が来るのを待ってる間、青木が思い出したようにカバンを漁(あさ)る。
「今日ね、調理実習でクッキー作ったの」
どこかで聞いた台詞。青木は透明のラッピング袋を取りだして、中には数枚のクッキーが入っていた。
「あとで一緒に食べよう?味は多分大丈夫だから」
予想外の言葉に俺は思わずクスリと笑ってしまった。
「な、なに?」
なんとなく青木らしいと思ってしまった。
青木はいつだって押し付けたりしないし、俺と共有することを選ぶ。
「ううん、なんでもない」
そう言ったあとでタイミングよく電車がきた。