群青ホームラン
「クッキーどう?ちょっと焦げちゃったかな?」
テレビを見ながら青木が作ったクッキーを口に入れた。感想を早く言ってもらいたいらしく、じっと俺の顔を見ている。
「うまいよ。全然焦げてないし」
そう言うとホッとした顔をして青木もクッキーに手を伸ばした。
そういえば手作りクッキーを食べたのは初めてかもしれない。調理実習で作ったって今日みたいに持ってくる人はいたけど、俺は絶対に受け取らなかったし。
「でも冴木くん貰ったんじゃないの?他の女の子から」
思わず食べたクッキーが喉に詰まりそうになった。
「え?なんで?」
うちの学校でも調理実習があったことを青木が知るすべは一つだけ。
「麻奈が言ってたもん。今日一年生がクッキー焼いてていい匂いがしてたって」
そうだ、宮野麻奈の存在を忘れてた。
宮野と青木はあれからも変わらずに友達関係でよく遊んだりしてるし、前よりずっと仲がよくなったらしい。
それはそれでいいけど、宮野は俺と同じ高校だからなにかと青木に色んなことがバレたりする。
まあ、別に変なことはしてないし、なに言われても大丈夫なんだけど。