群青ホームラン
俺を冴木くんと呼ぶのは青木ともうひとり。ニコッと笑って近づいてきたのは宮野麻奈だった。
俺にとって宮野は苦手な存在だったけど、今は気軽に話せるほどの関係になっていた。
「今日は夏月と一緒じゃないんだね」
「うん。さっき駅にいたけどね」
「駅に?あーそっか。文化祭の買い出しだね」
さすがは友達。青木のことならなんでも知ってるみたいだ。
「それで?なんでそんな深刻な顔してんの?」
宮野はあれ以来何かが吹っ切れたのか、俺への接し方も変わった。今は青木の彼氏として俺を見ているし、中学から俺を知っているせいか何かと鋭い観察力を見せる。
前の俺なら絶対に宮野とこんな風に話すことはなかったし、何を聞かれても答えなかったと思う。
でも今は俺のモヤモヤを宮野なら解決できるかも、なんて思ったりしてる。
「……なんか文化祭に来たらダメって言われたんだよね」
ボソッと聞こえるか聞こえないかぐらいの声で言った。雑音が行き交う空間で宮野は予想もしない言葉を言い返してきた。
「当然じゃない?」