漆黒の瞳
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私は数学が苦手というわけではない。
むしろ、高校で習う科目の中では、もっとも得意で好きなものだ。
でも、だからといって、一時間目から三時間連続であるA週月曜日の数学の時間に、教師の説明がわからないからといって、私に説明を乞わないでほしい。
二時間の数学の時間、私は自分の席に座って隣の席の女子生徒に数学を教えながら、内心でげんなりしていた。
――つまらない。教えている問題は、応用問題としてでも教科書に乗らないような多少難しい問題だったけれど、この程度の問題であれば教科書内容をしっかりと理解さえすれば、なんら問題なく解けるはずだ。
しかし、この問題で躓いているということは、おそらくこの生徒は教科書内容を理解しているようで理解していないのだろう。
「むむむむむ……」
奇声をあげながらも必死に考える女子生徒。
早く手元にある問題集を解きたいと思いながらも、少しヒントを与えた。
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