キミを想う。
「あれ?なにしてんの?」
「郁斗!」
突然、背後から瀬野くんが現れ、加穂さんはびっくりしたような声を出した。
「あ、ちょっと絡まれそうだったから、助けてもらって」
えへっと加穂さんは可愛く微笑んだ。
「あ!名前聞いてなかったですよね?」
そう言って加穂さんは私の方に視線を向けた。
「ゆず?」
「えっ!知り合い?」
加穂さんはびっくりしたように私と瀬野くんを交互に見た。
「うん。同じクラスで友達。なっ?」
そう言って笑う瀬野くんに、「う、うん…」と返事をする。
「へぇー。意外だね!郁斗にこんな静かそうな友達がいるなんて」
「おい、失礼だな」
「あ、ごめん」
二人盛り上がる中、私は一緒に笑うことも会話に入ることも出来なかった。
「あ、あの…!わ、私、用事があるので、失礼します」
そう言って頭をペコッと下げて小走りでその場から去った。