キミを想う。



「さっきから一人で何騒いでんの?泣いたり焦ったり」



「…えっ?」



「百面相、面白すぎんだけど」


ユキくんは笑いを堪えられないのか、いつもの無表情な表情が崩れていた。


その表情を見て、ドキン!と胸が鳴る。


すごく、無邪気な笑顔に見えた。



ユ、ユキくんが笑ってる!


あのいつも無表情なユキくんが…。



「はぁ~…久しぶりに笑った」


笑い疲れたのかぐったりしている。



「ご、ごめんなさい…」


「何で謝るわけ?」


「えっ?あ、あの…ひゃ、百面相して」


「そのことかよ」


そう言ってユキくんはまた可笑しそうに笑った。




ユキくんも笑うと子供みたいな表情になるんだな…と見つめていると、「どこで降りるの?」と聞いてきたユキくんと目が合ってしまい、またドキッと心臓が鳴る。



「あ、さっきの駅です」


「行くよ」


そう言って電車を降りると、反対方向の電車に乗り換えた。



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