キミを想う。
「ゆず?」
「えっ?」
名前を呼ばれ声のした方向へと顔を向けると、菜々ちゃんが立っていた。
「えっ?今、ユキといた?なんで?」
菜々ちゃんは私とホームへと消えていったユキくんの方を交互にチラチラと見る動作をした。
「あ、えっと…色々あって…」
「色々って?」
すごく興味津々な表情で見てくる菜々ちゃんに、どう説明したらいいか言葉に悩む。
泣いたことを言えば、瀬野くんへの気持ちや、加穂さんのことを言わないといけなくなる。
それは菜々ちゃんにとって嫌なことだから、絶対に言えない…。
「あ、えっと…電車でたまたま会って、気分が悪くなったから、改札口まで送ってもらったの」
あー…。
嘘ついちゃった。
ごめんね、菜々ちゃん。
「そうなの?!大丈夫?」
「う、うん。もう全然、大丈夫」
笑って誤魔化すが、胸がチクリと痛む。
「それならいいけど、早く帰ってゆっくり休みなよ?でも、ユキが送ってくれるなんて意外だね」
「う、うん…」
菜々ちゃんは心配して、私を家まで送ってくれた。
菜々ちゃんへの隠し事がまた増えた…。