キミを想う。



「菜々子、いいだろ?別に一人増えても」


「あっ、うん…」


それまで黙って見ていた菜々ちゃんは複雑な表情を浮かべている。



「やった!ありがとう!」


ニコッと嬉しそうにお礼を言って友達のもとに向かう加穂さんを見送る。


菜々ちゃん、大丈夫かな?


心配になり隣にいる菜々ちゃんの顔を覗く。



「ゆず」


「は、はい!」


「今の人って…、郁斗のなに?」


「えーと…。三和くんが言うには幼なじみみたいだよ」


ドキドキしながら答える。



「それだけ?」


「あ…」


"瀬野くんの好きな人"と言うべきか迷っていると、「あれ?ユキ、来たの?」と言う三和くんの声に俯いていた顔を上げる。



「暇だったし」


そう言って菜々ちゃんとは反対の私の隣の席に腰を下ろした。



「珍しい。ユキが来るなんて…。もしかしてゆずがいるから?」


こそこそと小さい声で耳打ちしてくる菜々ちゃんに、何故だか顔が熱くなる。



「な、なに言ってるの!?そんなわけないじゃん!」


慌てる私が面白いのか、菜々ちゃんはさっきまでの暗い表情とうってかわって明るい笑顔になっていた。


ユキくんが私なんかが理由で来るはずないよ…。


チラッと隣に座るユキくんを見るが、当の本人は数学の教科書をパラパラと開いて勉強態勢になっている。


やっぱり菜々ちゃんの考えすぎだよ。


そう自分に言い聞かせてテスト勉強に戻る。



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