キミを想う。



今にも喧嘩が始まりそうな雰囲気にどうすることも出来ず、ユキくんを睨む瀬野くんと、目も合わせないユキくんの間でオロオロするしかない。



「あ、あの瀬野くん、ごめんなさい…。き、昨日は帰りの電車で気分悪くなってたのを助けてもらったの…」


うん、嘘じゃない。



「ユ、ユキくんも心配か、かけてごめんなさい。もう大丈夫だから…ね?」


お願い喧嘩しないで!


泣きそうになりながら見たことない二人の怖い空気に圧倒されそうになっていると、「なに?!喧嘩?」と少しびっくりした様子で加穂さんがやって来た。



「あれ?ユキも来てたんだね。どうしたの?二人が喧嘩なんて珍しい」


加穂さんの登場に瀬野くんが「べつに、喧嘩じゃないよ」といつもみたいに笑って答える。



「ごめん。ゆず、驚かせて」


「あ、ううん…」


良かった…。


加穂さんが来てくれて。


喧嘩が酷くなる前に終わってくれて良かったと安心していると、「帰るわ」そう言ってユキくんはお店を出ていってしまった。



えっ!?


ユキくん…本当に帰っちゃった。



「お前らなに騒いでんの?」


飲み物片手に席に戻ってきた三和くんは状況を理解できず瀬野くんに聞いている。



「何もないよ。それより俺達もそろそろ帰ろう」


「はっ!?食いもん買ってきたのに」


「あ、じゃあ私も郁斗と帰るね!またね」


さっさとお店から出ていく瀬野くんを追いかけるように加穂さんも出ていってしまった。



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