キミを想う。
「んー!疲れた!」
手を上にあげ背筋を伸ばす菜々ちゃん。
駅に向かいながら、ずっと座って痛くなった肩と腰をほぐす。
あの後、二時間勉強をして、頭がパンパンに感じる。
早く家に帰って、お風呂に入ってふかふかの布団が敷いてあるベッドに寝たい気分だ。
「菜々ちゃん、今日はありがとう。それとごめんね…。瀬野くんと一緒に勉強会出来たのに…」
「何でゆずが謝るの?言い合いしたのは二人なんだから、ゆずは関係ないよ」
そんなことないよ。
ユキくんが怒ったのも、瀬野くんが腹立ったのも、私が自分の気持ちを誤魔化しているからだよ。
「それよりさー、さっき会ったあの女の人ってなんなの?郁斗とどんな関係なの?本当にただの幼なじみ?」
ずっと気になっていたのか、菜々ちゃんは勢いよく話してくる。
「て言うか、一緒に花火大会とかちょっと嫌なんだけど」
やっぱり加穂さんを花火大会に誘ったのは嫌だったみたいでブツブツ文句を呟いている。
そりゃそうだよね。
折角好きな人と花火大会行けるのに、瀬野くんとどんな関係か分からない女の子が一緒に来るなんて。
「そう言えばさっきの人、ゆず、知り合いだったの?」
「えっ!えっと…実は」
昨日、帰るときに加穂さんが校門前で絡まれそうになるのを助けた?巻き込まれた?ことについて、菜々ちゃんに詳しく説明をする。
「へぇー、そうなんだ。確かに、可愛かったもんね。男の人なら声かけたくなるのは分かる」
納得したように、腕を組みながらうんうんと頷く。
「郁斗、あの人のこと好きなのかな…」
「えっ?なんで…?」
心臓がドキッと鳴る。
「んー、ただの勘?」
そう言って悲しそうに笑った。
菜々ちゃん、ごめんね。
何の力にもなれなくて。