キミを想う。
「あ、花火大会どうする?始まる前に祭りも見るだろ?」
「た、多分…」
菜々ちゃんとはいつも夏祭りを楽しんでから、花火を見る流れである。
「じゃあ加穂にもそう伝えとく」
そう言って早速加穂さんに連絡しているのか、スマホをいじる瀬野くんに三和くんが話しかける。
「加穂さん、やっぱり来るんだ?拓斗さんは?」
「…知らね」
冷たくそう答える瀬野くんに、三和くんは小さく溜め息をついた。
「…俺、戻るわ」
「あ、はい」
一瞬、空気が冷やっとした気がした。
"拓斗さん"って誰なんだろ?
ユキくんも知ってる人なのかな?
そんなことを考えながら、教室を出ていくユキくんの背中を見つめる。
「来週から夏休みだな。ゆずはどこか行くの?」
「えっと、特には…」
「菜々子と遊ぶぐらい?」
「は、はい…」
さっきの冷たい雰囲気は消えて、いつもの優しい瀬野くんに戻っていた。
何かあるのかな?