キミを想う。
「浴衣似合ってる。髪上げてるのもいい」
「…えっ?!あ、あの…ありがとう、ございます」
サラッと瀬野くんに言ってほしかった言葉をユキくんは自然に言ってきて、一瞬、心臓がドキッと鳴る。
褒められたのが恥ずかしくて自分でも分かるぐらい顔が熱くなっていく。
「…花火大会、返事なかったから、どうしたらいいか分かんなくて、とりあえず郁斗んとこ来たら、来てたし良かった」
「…あ、返事しなくてごめんなさい」
「困らせた?」
「あ、えっと…」
「郁斗がいるから?」
えっ?
ユキくんの言ってる意味が分からず、でもちゃんとユキくんには言わないといけないと思い、返事が出来なかった理由を話す。
「あ、えっと…返事なんだけど、その、ユキくんの連絡先が分かんなくて、どうしたらいいか私も分かんなくて…」
何故か早口で勢いよく喋る。
ユキくんの方を見ることが出来ず俯いたままでいると、「…そっか」と安堵の声が聞こえてきた気がした。