キミを想う。
「ユキくん!!」
自分なりに大きな声を出したが、ちゃんと声が届いているかは分からなく、少し不安になる。
「……なに?」
少し間をおいて静かにゆっくりとユキくんは振り返った。
良かった。
ちゃんと声届いた。
「あ、あの…さっきはごめんなさい。名前、答えられなくて」
バッと頭を下げて謝る。
「…別にいいよ」
「で、でも…怒ってるよね?」
溜め息混じりに話すユキくんの顔を恐る恐る覗く。
「怒ってない」
「本当にごめんなさい」
「だから怒ってないって」
何度も謝る私にユキくんはまた大きな溜め息を吐くと私の方に近付いてきた。
「…"真田くん"が俺だって分かってどう思った?」
えっ?
ユキくんの顔を見上げる。
綺麗な顔が私を真っ直ぐに見下ろしている。
「噂の相手が俺だって分かって」
「えっと…、びっくりしました」
「他には?」
「えっ……、あー…」
「俺は嫌じゃなかったよ。あんたと噂流れたの」
じっと目を真っ直ぐに見つめてくるユキくんから視線を逸らせずに固まる。