キミを想う。



「おい、ボーっとしすぎ」


「えっ?」


帰りの電車に乗り込み空いている席に座っていると、吊革を掴んで見下ろしているユキくんが現れた。



「ホームからずっと隣に立ってたのに全然気付いてなかっただろ?」


そう言って溜め息混じりに隣に腰を下ろした。



「考え事?」


「あ、うん…ちょっと、友達いなくてどうしようかと」


「…今更?」


呆れたような表情を浮かべるユキくんに言い返せず黙ってしまう。



「…悪い」


「えっ!?ううん!本当のことだし大丈夫!あ、あの、加穂さんと瀬野くんにお出かけ誘われて」


私が返事をしなかったからか、傷付けたと思ったらしく、謝るユキくんに慌てて事情を説明する。



「それ、俺が行ってもいい?」


「えっ?」


「土曜日、暇だし」


「で、でも…」


「あんたがあの二人と一日三人で過ごすのがどうもないんならいいけど」


「えっと…、それは困ります…」


「じゃあ決定。ほら、あんたの降りる駅」


「あ、本当だ!ありがとうございます!」


慌てて電車からホームへと降りると、ユキくんを載せた電車はまた走り出した。



またユキくんとお出掛けか…。


土曜日、大丈夫かな。


色々と心配になってきた。




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