キミを想う。
第5章
「映画」
「あれ?ユキ!?」
あっという間に約束の土曜日がやってきた。
午前中だけ授業があり、午後からは加穂さんと駅で待ち合わせをすることになっていた。
「珍しいね!ユキが来るなんて」
私と瀬野くんとまさかユキくんが来るとは思ってもみなかったらしく、加穂さんは驚いた様子でユキくんを見ていた。
「…私に友達がいなくて、可哀想だからって来てくれたんです」
苦笑しながら事情を説明する。
「違ぇし…」
「あ!暇だからだったよね!」
「……はぁ~」
大きな溜め息を吐くユキくんに加穂さんは大きな声で吹き出した。
「ははっ!ゆずちゃんって鈍いね」
そう思わない?と瀬野くんに同意を求める。
「…まぁ、確かに」
瀬野くんも苦笑しながら答える。
瀬野くんまで!?
そんなに鈍くないけどな…。
だって、瀬野くんにとって加穂さんは特別な女の子だってことすぐに気が付いたよ。
仲良く笑って話す二人の姿をじっと見つめる。
やっぱり胸がチクッと少し痛む。