キミを想う。



「今日はごめんね」


そう言って映画館まで向かう私の隣に加穂さんが並んで歩く。


「い、いえ!誘っていただいて嬉しいです。でも、お祭りの時のことなら気にしないで下さい」


「…ゆずちゃん、怒らないでね?本当はね、この映画、違う人と観に行く予定だったの…」


申し訳なさそうに加穂さんはチラッと視線を私に向けると、手を合わせ謝った。



「それは彼氏さんですか?」


「えっ!?知ってるの?!彼氏のこと」


「瀬野くんのお兄さんですよね?お祭りの時に瀬野くんから聞きました」


「あ、そうなんだ。そうだよね。私、いきなり帰っちゃったから、郁斗から聞いてるよね」


恥ずかしそうに加穂さんは笑い、言葉を続ける。



「拓ちゃん…あ、彼氏なんだけど、急に予定が入っちゃって」


受験生で学校の受験対策講座とデートの日が重なったことを説明してくれた。




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