キミを想う。
「文化祭①」
映画の日の件から一ヶ月が経った。
特に瀬野くんやユキくんと進展はなかった
が、今日から始まる文化祭で関係が動くことになるとは思いもしなかった。
朝から校門には文化祭の看板が掲げられ、外で受付やお店の準備をする生徒や先生、校舎内では各クラスで最後の準備が賑やかに行われていた。
「ゆずのクラスは準備出来た?」
「うん。菜々ちゃん、格好いいね。その衣装」
違うクラスから菜々ちゃんがクラスの出し物で着る衣装を着て様子を見に来た。
「似合う?格好良い?」
嬉しそうに黒い衣装を自慢する菜々ちゃんに笑っていると、私の背後から瀬野くんが会話に加わってきた。
「菜々子、教室の戸のとこで喋ってんな。出入り出来ないだろ」
「うるさいなー。邪魔扱いする前に衣装褒めてくれてもいいじゃん」
「なに?それ?男装?」
「ドラキュラの格好なの。私のクラスお化け屋敷するんだー。今から血糊つけて完成!」
身長が高くてスラッとしている菜々ちゃんはドラキュラの衣装を本当に格好良く着こなしていた。
「ゆずに来てほしかったけど、怖いの苦手だもんね。残念…」
「ごめんね…」
折角の文化祭。
菜々ちゃんのクラスにも行きたかったが、お化け屋敷は怖くてさすがに無理だった。