キミを想う。



「本当にお願い!もう時間ないの!まだ誰も歌が上手い子見つけられてなくて」


必死に頼む菜々ちゃんに、段々と気持ちが揺らいでくる。



「……上手く歌えないかもしれないよ?緊張して声がちゃんと出ないかもしれない。バンドしてる子たちに恥をかかせちゃうかもしれない」


そうなったら私だけじゃなくて、私を紹介した菜々ちゃんまで悪く言われちゃうんじゃないかな?



そんな心配をしていないのか、菜々ちゃんは「ゆずなら大丈夫」と力強く頷いた。


その菜々ちゃんの表情を見ると、「…分かった」と勝手に口から言葉が出ていた。



沢山の人混みを掻き分け、急いで菜々ちゃんと体育館へと向かう。


途中、「なに?不思議の国のアリス?!」「ドラキュラ!?」「イケメン執事!!」と言う声が聞こえてきた気もするが、そんなことを気にしている余裕はなかった。



ステージの出番まで後5分しかないと連絡が来て、間に合う為に必死だった。





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