キミを想う。
本当に大丈夫かな、ちゃんと歌えるかな…と緊張で胃が痛くなる。
ステージ袖は暗く、ライトで照らされているステージをジッと見つめる。
バンドの女の子達と最終確認をしながらも、皆、「何で真田くんがいるの?」と不思議そうな顔をしている。
出番まで後1分と言う時に、ユキくんが突然声を発した。
「…ギターは?」
「えっ!?」とバンドの女の子達の声が重なった。
言われてみると、ベース、キーボード、ドラムしかいない。
「ボーカルって、ギターボーカルだったの?」
ユキくんが女の子達に尋ねると、青ざめた顔で「…そうだった」とベースの子が呟いた。
ステージでは大きな拍手が起こり、今演奏しているバンドの出番が終わりだということを告げた。
「…なんの曲やるの?」
ユキくんはキーボードの子から小さなメモに書かれたリストを奪うと、「ふーん…」と小さく呟いた。