キミを想う。
「ありがとうございましたー!!」とテンション高く、ステージ袖に戻って来た同じ一年生のバンドと入れ替わりで、私達のバンド名が紹介された。
どうしよう!?と皆で顔を見合わせる中、
「これ貸して」と戻って来たばかりの男の子から、ユキくんがギターを奪い取った。
「えっ!?真田!?」
突然の出来事に驚く男の子を無視して、ユキくんは一旦ライトが落ちて暗くなったステージへと歩き出した。
私達も急いでステージへと向かい、楽器の確認や立ち位置を調整する。
パッとライトが点くとすぐに体育館がざわつき始めた。
「何あの格好?」「コスプレ?」「ウケるんだけど」とクスクス笑う声が聞こえる。
確かにバンドの女の子はお揃いの紺のチェックのスカートに黒いTシャツを着て、格好を揃えているが、私とユキくんは不思議の国のアリスと執事の姿のままだった。
体育館にいる生徒や先生、他校生や保護者など、大勢の色々な人達から視線が注がれていることに、分かっていながらも怖気づいてしまう。