キミを想う。



そんな私の緊張をほぐすように、「大丈夫!」と右側に立つベースの女の子が皆に声をかけたのを合図に、ドラムの音が鳴った。


初めて合わすのにユキくんのギターは皆に合わせて演奏をしていて、思わず皆でユキくんを見つめてしまう。


私も静かに深呼吸をして歌い出すが、緊張からか上手く声が出ない。


マイクを持つ手が震える。



「聞こえねーぞ!」


男子生徒の声が体育館に響く。


視線が怖い…そう思って、目を閉じた瞬間だった。



「皆に可愛いー声聞かせてやれ!」


聞き覚えのある声が聞こえた。


グルッと体育館を見渡すが、声の主が見つからない。


でもそんなこと言うのは、あの人しかいない。


この体育館のどこかで聴いてくれてるのかな…?


そう思うと何故か少し緊張が解けた。



改めて深呼吸をして歌い出す。


少しずつ大きな声になっていってるのが自分でも分かった。



煩かった体育館が段々と静かになり、「えっ?めっちゃ歌上手くね?」「確かに声可愛いー」「静かに!聴こえねぇ!」と言う声があがりだしたことに気が付いていなかった。




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