キミを想う。
「どうした?!」
急に掴んでいた腕が自分の手から離れたからか、ユキくんは慌てて振り返った。
「…ご、ごめん。ちょっと緊張の糸が解けて…。力が抜けちゃったみたい…」
恥ずかしくてユキくんから目を逸らすと、いきなりフワッと体が宙に浮いた。
「えっ!?ユ、ユキくん!?」
お姫様抱っこをされたまま、体育館裏の腰がかけられそうな場所へと移動して、優しく降ろされる。
その降ろし方があまりにも優しくて、恥ずかしくなる。
「ご、ごめんなさい…。ありがとう」
正面にしゃがむユキくんにお礼を述べると、そっと手を握られ、心臓がドキッと跳ねる。
「…手、震えてる」
「う、うん…。大勢の前で歌うの緊張して、ずっと震えが止まんなくて…。おかしいよね?」
あはは…と笑って誤魔化すが、なかなか握られた手は震えが止まらない。
「上手だったよ?びっくりした。歌が上手くて」
「…ユキくんも、ギター上手くてびっくりしたよ」
「…父親の影響で少し弾ける程度だよ」
「そうなんだ…」
ユキくんから初めて家族の話を聞いたな…と考えていると、急に思い出したのかクスッと笑った。