キミを想う。
「お前さ…」
口を開く瀬野くんにゴクリと唾を飲み込む。
「ゆずー!」
ドキドキした空気を壊すように、菜々ちゃんの声が近付いてきた。
「化学の教科書貸して!忘れちゃったの」
「…うん」
慌てて瀬野くんから視線を逸らし、鞄の中から化学の教科書を取り出す。
「お前、声デカ過ぎ」
「仕方ないでしょ!これが普通なの」
瀬野くんの呆れた言い方に言い返す菜々ちゃん。
「ごめんね、ゆず。後で返しに来るから」
「…うん」
走って教室に戻る菜々ちゃんを見送り、私も次の授業の準備をする。
そう言えば瀬野くん、何か言いかけてたけど何だろ…。
チラッと隣の瀬野くんを窺うが、さっきのことは忘れたのかスマホをいじっていた。
一体、何を言うつもりだったんだろ?