Shoegazer,Skygazer
 
それから何か用事があると言う彼女は、また軽快な足取りでどこかへと去っていった。


用事、か。

俺には何にもないな。


世界中から切り離されたような感覚が胸をよぎったが、別に寂しいとか悔しいとかそういう感情とは無縁だった。


本来であれば学校に行くのが俺のこなすべき予定だろう。

だけどもそれを拒絶したのは他ならぬ俺自身。


なんだかもう、どうでもいい。


木々の葉の間から覗く空は青くて、やっぱり気持ち悪かった。


あそこから下を見下ろせたら、さぞや気持ちいいだろうな。

全てを『見下せる』んだから。


嫌な事ばかり考えるようになったもんだ。


まもなく日は最も高く昇る。

照りつける強烈な光が地上の全てを焼き尽くしたって、きっと俺はなんとも思わないだろう。

たとえ大地震が来て目の前で人が死んだって、たとえ核が落ちて吹き飛ばされたって。


ちっぽけな一人になにができるっていうんだろう。

俺の存在なんて、母を苦しめて、クラスメイトから気味悪がられて、あの少女からも鼻で笑われるくらいの価値しかないんだから。


空は自由だなんて嘘だ。

自由は幸せじゃない。

誰かと繋がっている限り、自由じゃない。

たとえば本当になんのしがらみもない自由になったとしたら、それは孤独だ。


それならば俺は自由なんだろうか。




父親を殺した自由な空に死にたかった。
 
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