Shoegazer,Skygazer
「ミヤタ君は、さ」


ミケは乗り出していた身を引っ込めて普通に座ってから、少し俺にすり寄った。

ことりと頭を俺の肩に預け、甘えるような声で問うてくる。


他人の体温を感じたのは久しぶりだった。

炎天下のなかそんなことをされても、不思議と不快ではない。



「好きなものってある?」


そう聞かれて、なぜか真っ先に青空が浮かんだ。

それを振り払って改めて考えても、思い浮かぶものがない。


嫌い嫌いばかりを並べたてて、俺はなにも好意的に受けとめようとしなかったんだということに、気付かされた。


「そこであたしが出てこないっていうのは、ナンパ的に0点。100点満点で」


「ナンパしたわけじゃない」


この期に及んでまだふざけるミケの頭を払いのけて咎める。

肩に乗せられていた頭はぴょこりと逃げると、俺に向き直ってまたにかりと笑った。


「じゃあ真面目にあたしはどう? 好きか、嫌いか二択で」


「極端だ」


「どっちかっていうとどっちよ。答えて?」


なんでもかんでも白か黒かに当てはめるのはどうかと思う。

感情だなんてものは特に。


「……難しい」


「ね。ここで好きって言ったらナンパ的に90点でも人としては微妙かな」


そう言って苦笑するミケの意図がよく分からない。
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